超古代史論の前提(1)人類の起源

(2013年筆)

 ここからは、超古代史を論じる前提について考えていきたいと思います。その第一はいうまでもなく、超古代文明を生みだした高度に発達した人類はいつどのようにして誕生したかという問題です。
 ホモ・サピエンスの誕生に関しては、幾多の説がありまだ確定していないこともあるようですが、おおよその所は20万年~10万年ほど前にアフリカで誕生して、世界中に広がっていったとされています。この説が正しければ、それ以前に文明はなかったはずですし、あったとしても猿人・原人・旧人レベルのごく低い段階の石器文明だけということになります。また、高度な文明があったとすれば、それはホモ・サピエンスに担われたものと考えられますので、年代としては10万年前以降でなければ整合性が保てなくなるはずです。そこで、最近の代表的な超古代史論者の主張を見てみると、そこら辺りがどう考えられているかが分かるかと思います。

G.ハンコックの「神々の指紋」は、実際に世界各地を飛びまわって集めた膨大なデータに支えられているとはいえ、多くの遺跡が語る謎を合理的に説明するには古代における高度文明社会を想定するしかないと結論付ける点では従来のアプローチと比べとくに目新しい点はないようです。とくに、問題となっている超古代文明の年代に関しては、1万年以上前に滅びたとされていますので、これらの形成に与ったのはホモ・サピエンスということになります。

著者自身、

「ここではホモ・ハビリスやホモ・エレクトゥス、さらにネアンデルタールですら取り上げようとは思わない。興味があるのはホモ・サピエンスだけだ。我々の歴史はそれほど古くないのだ」

と述べていますし、地質学的変動や氷河期の年代まで出てきますので、まず常識的な判断だと考えてよいでしょう。

 次に、日本人でこうしたアプローチを行った人物として、浅川嘉富氏を取り上げてみますが、場所がペルー(カブレラストーン)他になっているものの、基本的にはG.ハンコックのアプローチと変わらないといえるでしょう(氏の最近の著作はかなりトンデモになっておりますので、ここでは'05年当時のネット上の著作を参考にしております)。しかし、その中には年代とそれをになった人類に関してかなり重要な指摘があります。

「ペルーやエジプト、メキシコの各地に残された古代遺跡を探索した結果、我々の歴史に登場する文明とは明らかに異なる文明、つまり、文明の発祥とされている四大文明などより遙か太古に存在したと思われる、高度なテクノロジーを持った先史文明の痕跡を発見し、その存在を明らかにした。人類が記憶の彼方に忘れてしまったこの謎の文明は、数十万年、乃至、数万年前から栄え、およそ1万5000年ほど前に滅亡したものと思われる」
「イカの石を詳しく調査した、女流考古学者ジョランダ・カリオンとエッダ・デ・ラ・クルスも『イカの石には、現在は絶滅している動物の絵と、人類学的に見て現代人とは異なる基本構造を持つ人類の絵が描かれており、イカの石が本物の遺物であることには、疑いの余地がない』と述べている」

 つまり、浅川氏のいう謎の先史文明の担い手はホモ・サピエンスではない可能性があり、その年代も現生人類の誕生以前のことかもしれないということになります。
ハンコックが地質学的年代や氷河の伸張、さらに現生人類の誕生と拡散などに対して意外と常識的に考えているのに対し、浅川氏の結論は現地踏査を踏まえた故の迫力に富むといえるのではないでしょうか。

 「では、人類の誕生は一体いつ頃だったのか?」という本題に戻らなければなりませんが、超能力によるYES/NOの課題はここで2つ出てきたと考えられます。1つはホモ・サピエンスと超古代文明を担った人類は同一だったのかという点、もう1つが誕生の年代です。

 最初の設問に関しての結果は「同一ではなかった」というものでした。従って、浅川氏のいう謎の先史文明の可能性も否定はできず、むしろ肯定すべきだと考えられます。但し、その文明が高度に発達していたのか否かは、遺跡等がないので何とも言えないというしかないのが現状です。

 次に年代ですが、ここで登場するのが「人類の隠された起源」であり、この本でクレモとトンプソンは、数十万年ではなく、数千万年も人類史を遡らせたのです。科学的に否定しようのない、しかし進化論と矛盾する証拠がいくらでもある。道具を持った人間が存在するはずのない地層から、切り込みや割った跡のある獣骨の化石・加工の跡のある石器が世界各地で発掘されており、その地層は古くは5000万年前にもさかのぼる可能性があるというのです。
 まぁ、彼らが国際クリシュナ意識協会の会員で、ダーウィニズムを否定する役目をもっているという件や、彼らの呈示している発掘証拠がほとんど19世紀後半から20世紀初頭に集中しているという事実に目をつぶったとしても、システマティックな証拠の提示に対しては敬意を表さねばならないようです。
 そこで、人類の誕生年代を視てみたところ、何と約3000万年前という結果が出たのでした。もちろん、ここでいう「人類」は先ほど述べましたように、現生人類とは異なる種ということになりますが、その詳細については後からおはなししたいと考えております。

【参考書籍】
Wikipedia
松岡正剛の千夜千冊
・G.ハンコック「神々の指紋」上下(翔泳社)
浅川嘉富「謎の先史文明」?人類は恐竜と共存した? 第一回-五回
 (東京理科大学同窓会機関紙「理窓」 平成17年1・4・7・10月号、平成18年1・4月号)
・クレモ・トンプソン「人類の隠された起源」(翔泳社)
・本城達也「超常現象の謎解き
・星野通平「膨らむ地球」(「膨らむ地球」刊行会)
星野通平教授の研究室
・リレスフォード「遺伝子で探る人類史」(講談社ブルーバックス)
浅見宗平「ふしぎな記録」〈第3・4巻〉星雲社
渡辺長義「探求 幻の富士古文献?遙かなる高天原を求めて」今日の話題社
竹田日恵「『竹内文書』世界史の超革命」徳間書店
正氣久嗣「正しい霊とよこしまな霊」徳間書店