ビルダーバーグの議題(CO地球温暖化論5)

 「明日のエコでは間に合わない」などという広報が大々的に流される中、2009年の11月に-一般紙やTVでは報道されなかったが-、
「IPCCが採用した、人為的な地球温暖化の有力な証拠とされるデータに捏造の疑いがあることが分かり、先週末から欧米主要メディアの報道が相次いでいる。かつてのウォーターゲート事件をもじった『クライメートゲート(Climateは気候・筆者注)』という言葉も作られた」
といった記事が一部のメディアで報じられました。

 日経新聞によりますと、何物かが英イーストアングリア大学(国際的温暖化研究の拠点のひとつ)の気候研究ユニットのコンピュータに侵入し、1996年から最近までの1,000通以上のメールをハッキングしてメールの内容がネット上で明るみに出たというものです。そこで注目されたのが「温暖化というファシズム」でご紹介した「ホッケースティック曲線」であり、あいまいなデータ処理が以前から問題視されていたこのグラフについて、同ユニットのフィル・ジョーンズ所長がメールの中で、データのごまかしがあったことを示唆しているというのです。同所長は流出したメールが本物であることを認めたうえで、「新データを追加しただけでトリックではない」と釈明したそうですが、他のメールからは同所長が懐疑派に圧力をかけたことなどが分かり、これは目前のCOP15を揺さぶることを目的とした内部告発ではないかとの見方も出ているという内容だったのです。

 さらに翌2010年1月には英サンデータイムズ誌に、
「IPCCが第四次報告書に記載したヒマラヤの氷河が2035年に消滅するというのは、科学的根拠はなく、イギリスの科学記者がインド人の山岳関係者に聞きかじったことを記事にしたことが判明した」
というニュースが掲載されました。驚くべき内容にこの頃から欧米メディアの温暖化に対する関心は大幅に薄れていったとされますが、実はIPCC自体も学者たちの疑惑にさらされた「ホッケースティック」について、2001年の第三次報告書には記載したものの、2007年の第四次報告書では削除するというお粗末ぶりを披露していたのでした。日本では何故こうした重要な報道がなされないのかはまた別の機会に譲ることとしますが、確実に言えることは地球温暖化に関しては欧米諸国と日本とでかなりの温度差があるという点です。「ビルダーバーグ会議」という聞き慣れない名前の会議についてみていくと、その辺りの事情がお分かりいただけると思います。

 産経新聞によりますとこの会議は、
「欧米の王候貴族から政財官のトップ級が集まって年に一度、米国や欧州で会合を開き、世界の主要問題を討議する秘密クラブ」とのことであり、「冷戦中の1954年5月、米国と欧州の北大西洋条約(NATO)加盟国の『橋渡し』を目指して、オランダのベルナルド王子によって創設」されたとされ、「米欧の有力者が大挙して出席するため1970年代ごろからクラブの存在がしだいに知られるようになった」
といわれています。記事は、
「ビクトリア英女王時代(19世紀)の宰相で文学者でもあったベンジャミン・ディスラェリ伯は、『世界は、舞台裏まで潜り込む目を持たない者が想像できない他の人物たちによって統治されている』と述べたが、『ビルダーバーグ』にこの言葉がはたして該当するかどうか・・・」
と結ばれています。

 このようなことは日本人にはにわかに信じ難い話でしょうが、欧米の政財界・社交界に通じている方とお話しして初めてそういうことに気付かされる類の話のようです。実態の検証はともかく、副島国家戦略研究所の中田安彦氏によると、この「三極委員会」や「ダボス会議」に匹敵する国際会議の2010年の議題から、それまで討議されてきた"地球温暖化問題"が抜け落ち、かわって"地球寒冷化"が論じられたというのです。この背景には、(1)クライメートゲート事件、(2)ヒマラヤの氷河の問題に加えて、(3)ノーベル平和賞を受賞したIPCCのパチャウリ議長による排出権取引金融疑惑の発覚があったのだろうとされています。さらに中田氏は、
「地球温暖化を奇貨としたニューエコノミーの創造-(中略)-といったアジェンダをビルダーバーグは掲げてきたのだが」、「ここに来て、『地球寒冷化』が討論の議題に加わったことは、事実上この問題でビルダーバーグが世界の世論形成に失敗したことを認めたに等しいだろう。分かる人には分かる形で白旗をあげたようなものだ」
と述べています。

 これらの内実を探ることが本書の目的ではありませんので割愛しますが、赤祖父氏の次の言葉に私たちはこの先どう対処すべきかを考えねばならないと思います。
「日本を離れて国際的観点から眺めていると、政官民一体となって『地球温暖化問題』について騒ぎ立てているのは日本だけではないかと思われる。」
「日本の将来にとって最も重要な問題は日本のエネルギーと食糧の確保である。-(中略)-世界的には、飢餓、水やエネルギーの不足、環境破壊の方が、はるかに深刻な危機ではないか。」

参考文献
世界経済のネタ帳
日本生活習慣病予防協会
日本経済新聞2010年10月24日朝刊
ボルマー&ヴァルムート著「健康と食べ物,あっと驚く常識のウソ」(草思社)
田中平三監修「サプリメント・健康食品の『効き目』と『安全性』」(同文書院)
福岡伸一「生物と無生物の間」(講談社現代新書)
赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」(誠文堂新光社)
オープンコンテントの百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日経電子版2009年11月26日
産経新聞2003年6月22日
【2010年ビルダーバーグ会議・緊急報告】”主役”不在の今年のビルダーバーグ会議。崩壊しつつある”グローバル・ガバナンス”の行方 (1) 2010年6月10日
農林水産省HP
ビジネスのための雑学知ったかぶり「日本の食料自給率は40%
財団法人エネルギー総合高額研究所HP
シフトムHP
近藤邦明「環境問題を考える
永濱・鈴木編「[図解]資源の世界地図」(青春出版社)
武田邦彦「温暖化謀略論」(ビジネス社)