もし現在の日本を「明るい時代」ととらえる者がいたら、それはよほど能天気で頭が悪いか、お金や遊びのことしか考えていない自己中心的な人間だと周囲からバカにされるのが落ちでしょう。とり合えず生きてはいるもののその日暮らしで展望もなく、何か不安な感じがつきまとっている・・・。女性にとってはまた違う見方、例えば「昔よりはるかに便利になった」とか「自由で"家"に束縛されないのがいい」とかが出て来るとは思いますが、生活レベルのことを捨象してみれば、大方の日本人は冒頭のように感じているのではないでしょうか。ここまで書き進めて来て気付くのは、「何一つ解決していない」ということと、それは昭和の初めからずっと続いているという点です。
ところが昭和20年代が終わる頃の日本では、戦後を自由で解放的な明るい時代とみる風潮が一方にあり、他方で敗戦を境に喪失感のみを感じていた人々もあったのです。前者が旧左翼であり後者が右翼・保守陣営であることはもうお分りだと思いますが、両者に共通しているのが敗戦を境に戦前・戦後を全く別の時代ととらえる見方だと思われます。けれども講和条約発効と同時に、公職追放を受けた20万人以上の者たちのみならず、A級戦犯(容疑者)までもが社会復帰していった事実、しかも彼らが戦後社会で再び枢要な役割を担ったことを考える時、戦前と戦後は連続しているとも考えられるのではないでしょうか。同じ公職追放といっても昭和25年(1950年)以降のレッドパージを受けた者たちが事実上復職不能であったことも、こうした考えを裏付けると申し上げられます。
手元の資料で主だった復職者をリストアップしてみると以下のようになります。
(A=A級戦犯、容=A級戦犯容疑者、公=公職追放者)
星野直樹(A) 東急グループの役員
佐藤賢了(A) 東急グループの役員
荒木貞夫(A) 皇道派の論客
鈴木貞一(A) 自民党(清和会系)のブレーン
重光 葵(A) 衆院議員(日本民主党)
賀屋興宣(A) 衆院議員(自民党タカ派)
青木一男(容) 長野放送役員
岸 信介(容) 元首相
葛生能世(容) 右翼団体指導者
児玉誉士男(容)政財界のフィクサー
谷 正之(容) 中米大使
後藤文夫(〃) 参院議員
笹川良一(〃) 日本船舶振興会
正力松太郎(〃)読売新聞社主
岩村通世(〃) 弁護士・家裁参与
須磨弥吉郎(〃)参院議員
赤尾 敏(公) 大日本愛国党総裁
赤城宗徳(〃) 衆院議員(自民党)
石井光次郎(〃)衆院議長
石田礼助(〃) 国鉄総裁
石橋湛山(〃) 元首相
市川房江(〃) 参院議員(二院ク)
植村甲午郎(〃)日経連会長
緒方竹虎(〃) 衆院議員
松下幸之助(〃)松下グループ会長
五島慶太(〃) 東急グループ総裁
下中弥三郎(〃)平凡社社長
円谷英二(〃) 映画監督
灘尾弘吉(〃) 衆院議長
鳩山一郎(〃) 元首相
松野鶴平(〃) 参院議長
野村吉三郎(〃)日本ビクター社長・参院議員
松前重義(〃) 東海大学総長
以上のような次第ですが、ここで私は人々の思想信条を問題としているのではなく"戦後"は"戦前"のメンバーによって担われたことを述べたかっただけなのです。官僚機講がほぼ無傷のまま温存されたことを考えると、敗戦を境とした変化は―少なくとも人事に関しては―あまりなかったと思われます。また復帰した彼ら自身にも"戦後"という意識は全くなかったと思われますが、では復帰できなかった者たち、つまり戦死した人々はどのように考えていたのでしょうか。この点について「戦艦大和ノ最期」の著者・吉田満の作品を引用してみますと、
「進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ、負ケルコトガ最上ノ道ダ、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ハレルカ、今目覚メズシテイツ救ハレルカ、俺達ハソノ先導ダ」
これが大和の乗組員の死の意味づけであるとすれば、それは戦前・戦後を問わず一貫した日本国家への忠誠であったと申し上げられるのではないでしょうか。
【参考文献】
「近代日本総合年表」第一版(岩波書店)
武者小路・姜・川勝・榊原「新しい『日本のかたち』」(藤原書店)
オープンコンテントの百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
保坂正康「昭和史七つの謎」(講談社文庫)
歴史ぱびりよん 概説・太平洋戦争 終戦工作その1
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関東学院大学 自然人間社会
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