2017年3月以降の放射線量上昇

■2017年3月から全国で線量が上昇中

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2019年二月にNHKのニュースで、福島第一からの放射性物質の放出量が前年の約2倍になったという報道があった。
確かに毎日チェックしている身にすれば、2・3年前までは関東地方もかなり放射線量が低かったのだが、この頃はどこもかしこもイエローゾーンになってしまった、という感じがしていたもの。例えば、この頃黄転したのは宇都宮・水戸など北関東の街、時々黄色くなるのが大宮・熊谷などと静岡県の中部。そのほか、愛知・岐阜から京都・大阪を経て西日本一帯がかなりの地域で黄転し始めたのもこの頃で、従来は点と線だった放射能汚染が面的に拡大したという記憶が思い出される。NHKの報道を見たとき考えたのは、福島第一における放射性物質取り出し等の作業が杜撰だったためかということ。

しかし、このころまでに千葉県銚子の驚くべき高線量(平均0.096μSv/h)に遭遇したため、何とか東京23区のデータを集められないかとやってみた結果、まず出てきたのが国分寺市のやはり驚異的な高線量(下図0.06~08μSv/h)であり、本レジュメの表紙に掲載した本の東京西部における脳卒中の多発を裏付けるものと考えられた。23区に関しては、政府の隠蔽のため困難を極めたが、「東京二十三区清掃一部事務組合について」というデータを発見。それによると、19年五月現在のμSv/hは、中央区0.070・港区0.043・北区0.055・品川区0.045・大田区0.04・多摩川0.08・世田谷区0.048・千歳烏山0.07・渋谷区0.07・杉並区0.045・豊島区0.058・板橋区0.053・練馬区0.055・江東区0.063・有明0.058・足立区0.073・葛飾区0.07・江戸川区0.055。ついでに同じごみ処理場だが、武蔵野市0.07と出ていた。

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以上の測定結果を見ると、福島県会津地方が0.07~0.08が中央値となっているので、それより都内は若干低いものの、極端に低い=安全とは言えないレベルだと考えられる。というのも、私が故郷会津へ戻ってYES/NOをやろうとしても結果が撹乱される所から、生体に影響する放射線量はγ線で0.07が 一定の目安になることが判明している。
逆に病気の発症率からいうと、北関東や東京都のモニタリングポストのデータは改竄の匂いがしてくる。地上1mで計測するのが原則であるのに、新宿などは地上18mに設置されており、これでは土壌汚染の影響が不当に除外されてしまうからである。

 

■全国で線量が上昇している理由

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こうして得られたデータに果たして信ぴょう性 があるのか、またこんなに高い値が出る理由があるのかという疑問も実はあった。日本政府がきちんとした計測 をやっていないためなのだが、反原発側にも理論的弱点があり、それは「汚染は確かにあったが被ばく線量がきちんと計算されていない」点であり、このため原発推進側が何の責任もとらないことを許してしまっている。

そこで京都精華大学の環境学者山田國廣氏の著書「初期被曝の衝撃」に当たってみた所、驚くべき事実が明らかになった。氏は放射線量を「差分法」を用いてクラウドシャインとグランドシャインに分け、さらに初期クラウドシャインを構成している核種の構成比を求め、その後さらに困難かつ膨大な計算を地道に続けて、初期の強制的外部被曝と小児甲状腺がん多発との因果関係を明らかにしたと言える。

そして、こうした手法で事故当時の状況が理論的に再現され、原発は津波によって壊れたのではなく、3.11の地震動によって下部配管系統が大きく損傷したことが分かってきたとのこと。特に 2号機の損傷が酷かったようで、その他はデブリとして原子炉の下方で水に漬かっているに対し、2号機は水をかけても全部下に素通りしてしまい、原子炉の途中に宙ぶらりんの形で核燃料が露出しているため水や空気と反応する。その上建屋のベント部も破損しているから、上からどんどん出ていくし下からは汚染水が漏れ出てくる状態であるとのこと。

もう一つ現在も放出が続いている証拠は、全国各地の環境放射線量のグラフに、新たな放射性プルームが飛んで来た時に生じるスパイクが北海道から九州まで各地で観測される点だとのこと。

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一日の変動リズムが全国で明確に確認されるということは、グランドシャインの影響ではなくクラウドシャインが高くなったということなので、これはまぎれもなく継続的に放射能が放出されている証拠であると氏は述べている。

 

■一時的なのか永続するのか

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東日本大震災=福島第一の放射能漏れ以後の、全国のモニタリングポストのデータを分析したところ、事故前にはなかった以下の重要な放射線変動の構造変化が起こったと山田氏は指摘している。それは何かというと、
(1) 降雨0日には事故前に存在しなかった「日変動リズム(1日一回ピーク線量がある)を生じていた
(2) ②Cs134、Cs137の降下によりグランドシャインの一次的上昇が起こる
(3) 降雨時は地面に降下したCs134、Cs137の水によるγ線遮へい効果により一時的な線量低下が起こる
(4) 事故前の平均線量に比べて事故6年後の平均線量は全国各都市で増加している
(5) 降雨日には雨量に比例してピーク線量が上乗せされていた
といった現象なのだとのこと。

このうち(4)の最近1・2年の平均放射線量の増加傾向だが、その原因は2号機放出プルーム中の放射性核種が、Cs134=半減期約2年とCs137=半減期約30年となったことなのだと説明される。初期に半減期の短い放射性核種から出ていた放射線が放出されなくなるとともに、Cs134とCs137の降下量が増え始めたからなのだということで、これはまた、(2)のグランドシャインの一次的上昇の原因でもあるとのこと。

また(1)と(5)を合理的に説明するのに、山田氏は次のように述べる。

2017年七月の九州豪雨、八月の秋田・青森や滋賀県長浜などの豪雨時に、ピーク上乗線量(平均線量からピーク線量までの差)が0.04μSv/hを超すようなスパイクが生じた。この原因について、私は福島第一原発から放射能放出が継続しており、低空(1km以下)を日変動リズムで日本全国へ飛来し、上空8~13kmの偏西風帯にはCs-134・Cs-137が上昇し、その核種が北半球の偏西風循環帯に蓄積して二層の放射能汚染帯を形成し、日本上空でも降雨があると自然系核種であるBi-214に加えて二層の放射能汚染帯からCs-134・Cs-137が合算されてスパイク線量を作り出していると考えている。

ということである。

列島の上空周辺は上図のような半閉鎖環境が形成され、列島がすっぽりと覆われていくようなイメージになっている。そして重要なことは、放射性プルームの経路というのは、何百年も何千年も前からの海風・陸風の流れが固定しており、福島第一からの流路は事故当時と変わらず、今も同様に広がっているという点。こうして全国各地の外部被ばく積算線量は、福島第一からの放射線放出を止めない限りどんどん高くなっていくわけで、汚染は今後も高濃度に推移し、結局日本国民は小出裕章氏が述べたような戒厳令状態から、かなりの長期間解放されないと結論される。

 

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