理科の視点(CO2地球温暖化論2)
気候変動の原因には太陽活動や火山噴火など未解明要因が多々あり、現段階では分からないことが多過ぎる。メカニズムの詳細が不明なままコンピュータプログラムを作ったとしても、正確な答えは例えどんなスーパーコンピュータによっても導き出せない、と赤祖父氏は述べ、過去の-人為的にCO2が排出されていない時代の-気温の変化に従って結論を出したのが前節での考察でした。しかし、詳細なメカニズムが分かっていないという点で、この分野はまたさまざまな説の跋扈を許している観があります。
ある人々は気候変動には日照時間の影響が最も大きく、この日照時間を左右するのは雲の量であるといっています。そして、雲の量に影響する最大のものは太陽からの放射線の量であり、最近の太陽活動の静止状態からするとこの放射線量が増大し、結果的に地球は寒冷化するだろうと主張しています。また別の人々は、硫黄分の多い化石燃料の燃焼によって生じるエアロゾルが、太陽エネルギーの一部を反射して気候を寒冷化させる。従って、地球温暖化を防ぐには化石燃料をもっと燃やした方がよいというのです。さらに他の人々は海流の影響を重視し、エルニーニョ現象-太平洋赤道域の日付変更線からペルー沿岸にかけての海面水温が高い状態が続くこと-で貿易風が弱まることが異常気象を引き起すとしています。この説に類似しますが、グリーンランドから大西洋・南アフリカを経てインド洋・一部北太平洋まで循環する深層海流大循環の強弱が、気候変動を引き起すより大きな原因であるとする人々もいるようです。
まさに複雑極まりない未解明要因が多過ぎる状況と申し上げられますが、こうした場合はより単純な視点を導入することが有効ではないかと思われます。つまり私たちが中学や高校で習った理科のレベルで、この問題を単純化したらどうなるかという試みです。そうしますと、地球は人類が誕生するはるか以前から激しい気候変動をくり返してきたことが分かります。最近の数十万年間だけをとってみても、約10万年周期で4回の氷河期があったわけですが、その原因ついてはまだまだ不明とされています。大体、現在の気温が正常であって氷河時代が異常に寒い期間であったのか、あるいは氷河時代が正常な時期で間氷期の現在が異常なのかについても、学者の間に一致した見解があるとはいえないのです。また寒暖を周期的にくり返しているのかどうかに関しても、現在のところ不明なようです。さらに時代を遡って中世代(2億5千万年前~6500万年前)に至ると、恐竜が活躍するジュラ紀・白亜紀がかなり温暖な期間だったことは化石の分布からも容易に分かります。さらに古生代石炭紀の植物群が現在の石炭であり、石炭は寒冷地からも採れることでこの時代が現在より温暖だったことも分かるわけです。この問超大陸が形成されたりそれが分裂・移動したり、気候変動などよりはるかに激烈な変化が繰り返されたことになります。
地質学的年代を遡ると、全球凍結(約7億3千万年前から6億3千万年前に至る全地球が凍結する程の激しい氷河時代)やポールシフト(自転軸の変化や地磁気の逆転)などもあったとされ、まさに”地球は生きている”という言葉がそのままあてはまりそうです。マクロで単純な視点を導入する限り、気候変動や地球物理学的変動は頻発しており、もちろんこれが人類のなせる技ではないことから、あまりに近視眼的なアプローチは事態を見誤る可能性が高いといってよいと思われます。
【参考文献】
世界経済のネタ帳
日本生活習慣病予防協会
日本経済新聞2010年10月24日朝刊
ボルマー&ヴァルムート著「健康と食べ物,あっと驚く常識のウソ」(草思社)
田中平三監修「サプリメント・健康食品の『効き目』と『安全性』」(同文書院)
福岡伸一「生物と無生物の間」(講談社現代新書)
赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」(誠文堂新光社)
オープンコンテントの百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日経電子版2009年11月26日
産経新聞2003年6月22日
【2010年ビルダーバーグ会議・緊急報告】”主役”不在の今年のビルダーバーグ会議。崩壊しつつある”グローバル・ガバナンス”の行方 (1) 2010年6月10日
農林水産省HP
ビジネスのための雑学知ったかぶり「日本の食料自給率は40%」
財団法人エネルギー総合高額研究所HP
シフトムHP
近藤邦明「環境問題を考える」
永濱・鈴木編「[図解]資源の世界地図」(青春出版社)
武田邦彦「温暖化謀略論」(ビジネス社)