3.11福島第一原発事故の実態
■2011年の福島第一原発事故以降の放射能の状況
現在の東日本の状態はチェルノブイリ以上の汚染状態で、原子力規制委員会が発表している地図などはほとんどデタラメに等しいと考えられます。というのも、福島第1原発事故の直後政府は、被ばく線量の許容限度を従来の原子力基本法で定められた年間1mSvから20mSvへ引き上げたわけですが、年間20mSvというのは、原発労働者が白血病を発症し労災認定を受ける線量に匹敵し、ドイツの原発労働者に適用される最大線量にも相当。政府はまた、年間20mSvは3.8μSv/時に相当するとしていますが、これは労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域」(0.6μSv/時以上)の約6倍に相当。結局現在の日本は、原子力災害特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言が発令されたまま解除されない戒厳令状態で、国連から許容限度を再び引き下げるよう要請が出ているにもかかわらず日本政府はこれに応じていない。
そうした目で全国の状況を見ると、福島第一の立地する福島県はもとより、東は北海道・西は九州まで事故前の自然放射線量を大幅に上回る放射線が観測されている。 例えば西日本でも愛知・岐阜の一部、京阪神の広い地域、また滋賀・三重から岡山・広島・山口などの広いエリア、四国と九州でも高い数値が。裏日本では島根・鳥取・福井・富山・新潟の一部までが高く、関東甲信地方でもかなり高い線量が報告されている。しかも政府が発表しているのは放射線のうちγ線のみの量で、β線まで含めれば実際はその倍以上の線量と考えなければならない。放射性物質にはα線を出す核種・β線を出す核種・γ線を出す核種があり、代表的なヨウ素131・セシウム134・セシウム137はいずれもβ崩壊をしてβ線を出す。要するに、β線とγ線の二種の放射線が問題となるわけで、ロシアやウクライナの線量計は両方をカウントする仕様になっている。簡単に整理すると、シンチレーション式はγ線のみ、GM管式はβ+γをカウントしているので、当然シンチ式が出す数値はGM管式の数値よりも低いものになるということになる。
放射能と疾病との因果関係を見るには、医療機関のデータが最も参考になるが、政府と日本医師会による隠ぺいで明確なデータが得にくい中、2018年に福島第一のすぐ上に位置する南相馬市立総合病院の臨床データが発表された。これを見ると大腸がん・胃がん・成人甲状腺がん・肺がん・成人白血病といった放射線障害に基づくと思われる腫瘍が軒並み急増しているほか、急性心筋梗塞も事故後 4年目くらいから著明に増加していることが読み取れる。同市の現在の環境放射線量はやや高いものの福島・郡山並みであるので、同病院の疾病の原因は初期被ばくに基づくと考えられる。
福島県の子供の甲状腺がんの著しい増加もI‐131等の初期被ばく線量と比例する結果が得られている。これに対し低線量内部被ばくの蓄積によると見られるのが右のグラフであり、汚染食品による健康への影響が明瞭に把握できる。民間人の作ったものではあるが、福島産食品は明確に汚染されており、”風評”などではなくものすごい”実害”があることを認識すべきである。例えば、大相撲の優勝力士には 2013年から福島米1tが授与されているが、そのために筋・靭帯の断裂を起こして翌場所の成績が振るわなかったのが貴景勝や稀勢の里。こうした事情は既に首都圏にも及んでいることは、水泳の池江璃花子の白血病を見れば明らかで、利根川水系のプールに長時間浸かったことが大きな原因だと考えられる。
下のグラフは、順天堂大学血液内科における入院(左)と外来(右)の診療実績 2014-2016年であるが、
外来新規患者総数は2011年の4倍で高止まりしたまま、5年間で急性白血病が3.6倍・悪性リンパ腫2.7倍・血小板減少症(ITPを含む)3.5倍・貧血疾患は10倍に増えているという異常な事態を物語っている。
さらに、2017年以降は、後述するような原因で、全国的に異常事態が表面化して来たと言える。
■内部被ばくと外部被ばく
放射能の人体に対する影響は外部被曝と内部被曝とに分かれ、身体の外にある放射性物質から放射線の放射を受けるのが外部被曝。一方、小さな埃や粉塵等に付着した放射性物質そのものを食べ物とともに体内に取り込んだり、呼吸とともに肺から吸い込み、体内に入った放射性物質から放射線を受けるのが内部被曝。外部被曝と異なり、内部被曝では体内に取り込まれた放射性物質により、それが体外に排出されるまでの間、至近距離から局所的に強い放射線を長期間継続的に浴び続けるため、低線量でも危険性が高く、繰り返し放射線を受け続けた臓器に癌が発生しやすいとされている。
外部被曝は、殆どが発生源からの距離が長いγ線から受けるもの。一方、内部被曝は放射性物質の粒子を吸い込んだり食べたりするわけで、α線・β線・γ線ともに受ける。γ線を発する物質を取り込んでも、到達距離が長いためエネルギーの殆どが体外に出てしまうので、受けるダメージは限定的である。問題なのはα線とβ線の内部被曝で、これらはγ線に比べて飛距離が短く、体外からであれば簡単に遮断できるが、その短い距離内で放射するエネルギーはγ線より遥かに大きいため、内部被曝の影響は非常に大きくなる。プルトニウム239はα線、ストロンチウム90はβ線、セシウム137はγ線を出すので、プルトニウムやストロンチウムは危険だと言われることが多いのだが、正確にはセシウム137も崩壊の過程でβ線もγ線も放出する。
(詳しくは、市民と科学者の内部被曝問題研究会編「放射能汚染食品の摂取による内部被曝の回避に向けた七つの提言」参照のこと)
至近距離から強力な放射線を集中的に一か所に受けるという点で、同じ実効線量で比較すると内部被曝は外部被曝の600倍から1000倍ほどの危険性があると言われている。つまり、外部被曝の1mSvと内部被曝の1mSvとは人体に与える影響は全く異なり、ICRP(国際放射線防護委員会)や日本政府が唱える1mSvまでは安全というのは、あくまで外部被曝のみを考慮したに過ぎないということに注意が必要である。
■呼吸が飲食の10倍影響がある
放射能に関して、飲食はクローズアップされやすく、食品放射能検査や出荷制限・海外の輸入制限について話題になりやすいが、呼吸による内部被ばくの危険性が非常に高い事が同時に知らされていないため情報が偏ってしまう危険性がある。これは政府による一種の隠蔽とも考えられ、空間線量が高い地域では外出時マスク(N95規格)をするなどの注意が必要となる。